落ちる
何度も落ちる。出逢うたびに私たちは、何度も何度も落ちてゆく。
それは、春風みたいに緑の湿り気を含んだ透明な空気。
あれは、安心感と目に映る全ての存在の好もしさを生み出して。
淡さと、緊張。まるで固く蕾んだ新芽のよう。
あと少しでこぼれだす喜びを詰めた小さな命。私たち。
ソワソワして、火照って、膨らんで、海の見える丘の上からふわりと飛ばされそうなほど。
だから私たちは手をつなぐ。
しっかりじゃあなくても、ほんの軽く、電車の吊り革に掴まるように軽く握るだけでも、
飛ばされなくて済むのをこの男の子はよく知っているみたい。
そんなものだから私はあちこち動き回る。海辺も森も街中もどこへでも。
行き着く先はこの男の子だから。だからずっと歩いていく。
たどり着くべき、design geek&food geek。
山に河に、後ろもみないで出掛けてしまうDgeek。
黄金色の天使の魚もセコイア杉もいつかあなたと解けて一つになる。
あいかわらず奇妙でキラキラした言葉とたわむれ(格闘し)てはショゲてニコニコして、
この世の喜びを小さな菓子から見いだしてるお気楽なFgeek。
でも青と白から降り注ぐインスピレーションはいつも私を満たし、生かし、
何者にも冒されることのなきセコイア杉へと変えさせる。
あなたと解けて一つになるための。
光を秘めた二つの生き物。
丘の上から見る遠く輝く街の灯も、大きな扉を押し開け、そっと入り込んだCity Hallのウィスキー色のシャンデリアの光も、きっと、二人で囲む夕食に灯されるロウソクの明かりには及ばない。
その小さな原始の光は時として、春を思わせる甘やかさと同じ。
震えだすような一つの予感をもって、チリチリと瞬いている。
きっとこれからも、何度も私たちは、恋に落ちる。
それは春風みたいに、あと少しで互いの胸に柔らかく倒れこむ前の、
頭がズキズキするような、こぼれだしそうな喜びのよう。
Written By 藤沢佳乃