"Mexique1934"な思い

ベッドが好き。眠るのが好き。

自分のものではない安らかな寝息を聞くのが好き。
暗闇の中でそっとまばたきする時の、
微かな空気の揺らぎが好き。肌と肌の隙間の温度が好き。
枕の上で自分の髪の毛の中に顔を埋めているのが好き。
枕の上にいるくしゃくしゃのだらしない髪の毛達を
かき分けて、私の顔を見つけだしてくれる手が好き。
寒さでどうしようもない時に、そこに待っている
温かい二本の脚が好き。お互いの踝がコツコツと当たって、
痛い、と笑いながら絡める脚が好き。
溺れそうな時に偶然掴むシーツや上掛けが好き。
最後は引き上げて、
あやうく沈んでしまうところだった私を抱える腕が好き。

　ベッドが好き。ベッドの上で起こる物語が好き。

眠るのが好き。私は眠るのが好き。

written by 藤沢佳乃