「あなたも本当はベジタリアン!? ベジタリアンをもっと知りたい!!」


「知的で心優しく、ちょっと偏屈」。私的なベジタリアンの人物像はこんな感じ。
食の選択肢のひとつである「ベジタリアン」。知っているようで、意外と奥の深いその内部を少しだけ覗いてみましょう。

 そもそもベジタリアンとは、動物性の食品は摂らず、野菜や穀物類を中心とした食品を摂っている人のことを差し、菜食主義者とも呼びます。食に関する情報、スタイルが飽和状態といえるほど世の中に氾濫している現在、さらに洗練された「食べる」ことへのアプローチとしてこの菜食を試みている人が増えつつあるのは事実。
 では実際、ベジタリアンとして生活するきっかけはどんなものなのでしょう?ある宗教では、特定の動物や魚介類を食べることを禁じていたり、また殺生を禁じるという観念から動物一切を食さない宗教など、宗教上の理由からや、アレルギーや病気治療の一環など健康上の理由、動物愛護の精神に立つもの、気軽なダイエットやファッシン感覚での菜食主義など、様々です。そんな、百人百様の理由と重なるように、実は、ベジタリアンもかなり細かくその種類が別れているのです。「野菜だけ食べてる人の事でしょ?」なんて思ったら、ちょっと驚きますぞ。簡単に分類すると、以下の項目に分けることが出来ます。

1.「セミベジタリアン」と呼ばれる、肉をなるべく食べないようにしている人達。つまり、必ずしも肉を食べないわけではないということ。

2.魚貝は食べるが禽獣類の肉は食べない「ペスコベジタリアン」

3.肉、魚介類は食べないが牛乳・チーズ・無精卵は食べるベジタリアンを
「オボ・ラクトベジタリアン」といいます。もちろん、肉、魚介類、卵も摂らない
「ラクトベジタリアン」もいます。

4.これが、ベジタリアンの中でも最も厳しい規制の食生活を送る「ビーガン」。ビーガンは牛乳やチーズさえも摂らない、”真正”の菜食主義者と言えるでしょう。

 ほかにも菜食ではあるが殺生の禁をより厳格に実施し、地中になっているものや(根菜類)、
地上で生えているものでも、収穫して食べる植物は一切とらず、自然に落下してくる木の実や果物、野菜も充分熟し自然に地上に落下したものをたべるというフルータリアンという分け方もできます。これらを見てわかるように、ビーガンのような厳格なベジタリアンもいれば魚や卵も食べるベジタリアンもおり、その幅はとても広いのです。
 自分の食生活を振りかえってみると、前述の分類のいずれかにあてはまり、実は私もベジタリアンだった、という人がいるのではないでしょうか?

 では、ベジタリアンだったらきっとヘルシーな暮らしなのね、と単純に思えて来ますが、ヘルス(健康)面でのメリットはどうなのでしょう?まずベジタリアンとしての食生活にシフトすることで大きく代わることは、肉の摂取量がゼロ、あるいは幾らかの摂取はあっても、ほぼ野菜だけの食生活になることです。小学校に上がると授業で学んだ、赤(肉類によるたんぱく質)・黄(穀類による炭水化物)・緑(野菜や果物によるビタミン)で分けられる、人体を作るために必要な三大栄養素の大きな柱の一つである「赤」が無くなる訳です。鉄分やビタミンB1、B2、B12といった、血や骨を作り、人体のエネルギー源を肉を摂ることで作り上げてきた事を、野菜から見い出してゆかねばならないのです。ベジタリアンとして実践してゆくためには栄養学に関する深い知識が必要といえるでしょう。いかにして野菜からたんぱく質や鉄分、カルシウム等を得てゆくか、無数の食材の組み合わせの中から選びとり、かつベジタリアンとしての精神にのっとったメニューをとることが必要なのだから。

 とはいえ、台湾、香港でのベジタリアン料理を指す「素食」、仏教や、ジャイナ教その他殺生を禁じた多数の宗教の教えが広く流布され世界的にもベジタリアン人口が最も多いといわれているインドのベジタリアン料理、日本での精進料理などの代表的なベジタリアン食からは、様々な香辛料や穀類、植物性の油などを巧みに取り入れ、人体に必要な栄養素をバランスよく配しているのがわかります。私達日本人に馴染み深い精進料理では、とくにきのこ類や根菜類、海草類も、肉食のかわりに取り入れる機会が段違いに増えるわけですから、野菜に含まれる食物繊維の摂取、その他のビタミン類、栄養素、水分が行き渡ることで、血液の循環を促し体内の老廃物を排出したり各機能を向上させる効果につながっているのです。結果的には肉食にもひけをとらないメリットがあるといえるでしょう。

 現在アメリカでの研究が盛んに行われており、これからの医学では必須となってくる分野として、ガンを予防するといわれているある特定の食品をさすデザイナーズフードが注目されてきているのですが、このデザイナーズフードとして挙げられている食品群にはセロリ、にんじん、大豆、椎茸、わかめ、こんぶなど(ここであげるのはごく一部ですが)、ほか多数の野菜・海草類が発ガン性抑制効果のある食品として含まれており、このような点からもそれらを多く摂取する機会のあるベジタリアンは、その食習慣においてメリットがあると思われます。

 では実際のベジタリアンメニューには、どのようなものがあるのでしょう?肉が入っていなければどう料理してもベジタリアン食と呼べるかも知れませんが、茹でたジャガイモと青菜、パン、という中世の修道院の食事のようなものだけでは、ちょっとそっけなさすぎますよね。では、質素だけれど、きちんとした「食事」の満足感が得られるちょっとした例を、厳格な菜食主義で食事に多くの規制を持つビーガンからとりあげて見ましょう。

 一見窮屈そうなビーガン食が専門の、アメリカのサンフランシスコにある一軒のビーガンレストランのメニューはこのような感じです。”地中海風おかずあれこれ”と題された食事。ディナープレート程の大きさの皿には、中東の丸く平たい釜焼きパン(ピタ)を4等分に扇状に切ったもの、時計回りに、フュモスとよばれる、香辛料で味付けしてあるひよこ豆のピュレを土手のようにぽってりと盛り、トップを少し窪ませそこにオリーブオイルをたらしてあります。隣にはレンズ豆とたまねぎをかるくドレッシングで和えたものが添えられ、その隣にはブリック(ピラミッド形をした中東の揚げ春巻きのようなもの)があり、ぱりっとした皮の中にはほうれん草のソテーが入っている。皿の中央にはビーツをほんのり甘く煮たものが載せられています。盛り付けのバランスをとるため、黒と緑のオリーブがさり気なく全体に散らされ、最後の仕上げに、このバラエティ豊かな皿の上に一枝、二枝重ね置いただけの平たい葉の西洋パセリが、緑色も清々しくしなやかな勢いで、お皿に統一感を出して
いました。

 どうですか?ちょっと素敵でしょう?豊富な食材から組み合わせ次第で、こんなにも彩り味わい豊かなベジタリアン食を生み出してゆけるなんて、楽しいですよね。このメニューは勿論一流の料理人の腕によるものですが、私達へのヒントはたくさん隠されています。また、より身近なものでは古くから私達が食べてきている「お精進」を見直すこともいいかも知れません。仏門での日々の修行に励む僧侶の、生命を持つもの一切を使わない食事はとても質素です。しかし、季節の野菜をふんだんに使い、現代の食生活からは影の薄くなりつつある、豆や乾物を料理に取り入れ、煮物、豆・豆腐料理、漬け物や納豆など、醗酵食品も組み込まれたその様式は、仏門としての精進料理だけではなく、肉食が主流となりつつある現代に移ってもなお深く根付いている私達の日々のおかずとほぼ同じ。
農耕民族としての長い歴史をもつ日本人は、理念うんぬんとは離れたところで、ベジタリアンという考えが自然と備わって暮らしてきたルーツを持っているかも知れませんね。

 しかし現代に生きるが故なのでしょうか、こんなに自然と密な暮らし、無理のない暮らしをしているようにみえるベジタリアンに、あれ?と感じる疑問もあります。「ベジタリアンはちょっと偏屈」と、時に感じるのです。ベジタリアンに対して理解できる部分(例えば菜食が人の体に有益である、殺生の禁など)と、それに対して反発する部分(肉や魚を摂ることを否定するあまり、時に肉食をする人自身を否定するというような行為等)です。また、菜食主義と称するならば、本来、それを実践する全ての人はビーガンであるはずなのに、最初にも挙げたような、魚貝や卵などを食べることができるフレキシブルさにも疑問を感じます。なにやらここに、動物愛護のヒューマニズムを掲げるあまり不自然になったり、実は肉食への欲望を捨て切れない感情を押し殺して、頭でっかちな論理に走ったり、ベジタリアニズムをわい曲させているような頑迷さが、見えかくれするような気がするのも否めないのです。

 結局のところ、その人その人の、ベジタリアンという食に対する選択は、生き方や価値観の一つであり、特に「食べる」というまさしく本能に直結する行為であるだけに、これらに対する意見や考え方には、議論は尽きないようです。ビーガンの方には、顔をしかめられるかもしれませんが、ドイツの教育学者であったルドルフ・シュタイナ−が彼の人智学で提唱するように、みなさんも「夢想家の傾向に陥りやすい、野菜だけのベジタリアン食にはミルクを!」飲んで、ヒートしそうな議題を前に、ほっと一息つくことにしましょうか。

written by 藤沢佳乃

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