壁に掛かるポートレイト。家族の温かな、裸の肖像。 私の目の前の、も。 それは、私の男、という名の肖像。 私自身も、あなたの女、というそれであるように。 見知らぬ記号。コーヒーの飲み残し。 心の中で熱を持つ柔らかな膿みが、 ほんの僅かな、 爪の先ほどの掻き傷でとろりと流れ出る。 テーブルの上の甘い染み。
written by 藤沢佳乃