森を歩く

しとつく雨に煙るように包まれた森を歩く。重く厄介な荷を背負い、森を歩く。

パシリ パシリ 枝を葉を踏みしめながら森を歩く。

一歩ずつ進んでいるはずなのに、一つずつ何かを手放しているよう。

私の左肩後ろへ、それは流れてゆく。

雨は何億という葉の重なり合いから少しずつ漏れ降り落ちて、霧のよう。

その何億ものガラス玉には幾重にもこの森が歩く私がたしかに映りこんで、

もう同じ形など、これから二度とないのだよと、木霊しながら地面へ吸い込まれていく。

この先には、彼が待っている。

ずっと昔の、粗野で無知な私があなたに会いに行ったあの時から、

一体何人の私があなたに会いに行ったことだろう

あなたにただ会うために、私は歩く。

あなたに許しを乞うために、私は歩く。

あなたに’私は生きてきた’と伝えるために、雨降る森を、私は歩いてゆく。

ああ、踏みしめるそばから立ちのぼる小さな命の匂いといったら。

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